障害年金制度における因果関係と、医学上の因果関係の違い

障害年金のご相談を受けていると、仙台や宮城県内の方から次のような質問をいただくことがあります。

「医師から“この病気は〇〇が原因”と言われました。ということは、障害年金でも因果関係が認められますよね?」

実は、ここに大きな誤解があります。医学と障害年金制度では“因果関係”の基準がまったく異なるためです。本コラムでは、仙台で障害年金を専門に扱う社労士として、この2つの違いをわかりやすく解説します。

 

1. 医学上の因果関係とは

医学における因果関係とは、「Aという病気・状態があると、Bが発生しやすい」という医学的・科学的な関連性を指します。

〇 医学上の因果関係の特徴

臨床データや研究結果から広く認められている「関連がある」「リスクが高まる」といった確率的な因果関係についても、その多くは個々の症例ではなく、病態に共通する一般的な特性を基礎として判断されます。

例えば、

  • 高血圧 → 脳梗塞になりやすい
  • 糖尿病 → 腎症や網膜症が起こりやすい
  • アレルギー体質 → 喘息を発症しやすい

といった“可能性を含めた関連性”が医学的因果関係です。

 

2. 一方、障害年金制度上の因果関係はまったく別基準

障害年金制度での因果関係は、医学よりもはるかに狭く、明確な関連性のみを認めるという点が大きく異なります。制度上の判断基準は、「社会保険制度上、一つの連続した傷病と合理的に評価できるか」に尽きます。

〇障害年金制度における因果関係の特徴

  • 「関連がある可能性」だけでは認めない
  • 誰が見ても明確で、典型的な因果関係のみ認定
  • リスク要因は考慮しない
  • 公平性を重視するため、厳格な運用

この「制度上の因果関係」は、初診日・保険制度の区分(厚生年金か国民年金か)に直結するため、実務的にも非常に重要です。

 

3. 具体例で比較すると理解しやすい

(1)高血圧 → 脳梗塞

〇医学:リスク因子として明確。医学的因果関係“あり”。

〇障害年金制度:高血圧の人が全員脳梗塞になるわけではないため、制度上は因果関係なし。

 

(2)高血圧 → 腎臓病

〇医学:関連性があるとされる。

〇障害年金制度:一般的な高血圧は因果関係なし。ただし、悪性高血圧の場合のみ例外的に因果関係が認められる可能性あり。

 

(3)糖尿病 → 糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症

〇医学:典型的な合併症で因果関係が認められる。

〇障害年金制度:障害年金でも制度上の因果関係ありと扱われる代表例。

 

4. なぜ障害年金制度では因果関係が厳しく判断されるのか

障害年金制度が明確な因果関係のみを採用している理由は、社会保険制度としての公平性を維持するためであり、もし医学的に「可能性がある」「関連が示唆される」といった段階で因果関係を認めてしまうと、初診日が本来より後に動いてしまい公平な初診日の認定が行えなくなるおそれがありまる。

また障害認定が曖昧になって審査担当者によって判断が異なるなど全国的な不公平が生じるため、制度としては客観的に確認できる明確な因果関係のみを基準としているのです。

 

5. 仙台の障害年金専門社労士としての実務アドバイス

① 医師の説明=障害年金制度上の因果関係ではない
医療・医学の世界と、障害年金制度の判断基準は完全に別物です。ここを理解していないと初診日の誤認につながります。

② 医療機関の受診歴・記録の流れを正確に把握する
障害年金制度上の因果関係は、受診状況等証明書・カルテ・経過から判断されるため、ヒアリングが最重要です。

③ 例外的に因果関係が認められる疾患を把握しておく
悪性高血圧や典型的な糖尿病性合併症など、制度上は例外的に因果関係が認められるケースも存在します。こうした「例外ルール」に該当するかどうかに判断に迷われる場合は、障害年金に精通した社会保険労務士へご相談いただくことをおすすめします。

④ 因果関係は初診日を左右し、等級にも影響します。
因果関係の判断を誤ると、基礎年金扱いになるか厚生年金扱いになるかといった保険制度の区分が変わり、保険料納付要件の判断、受給の可否に影響するだけでなく、最終的な等級認定にも大きな差が生じます。

 

まとめ

医学上の因果関係は、症状の関連性が認められれば幅広く肯定される一方で、障害年金制度上の因果関係は、誰が見ても明確な関連が確認できる場合に限って認められるという特徴があります。

制度の公平性を確保するため、因果関係の判断は厳格な基準に基づいて行われ、誤った判断は初診日の取り扱いや等級の判定に直結するため、慎重な検討が不可欠です。そのため、障害年金の因果関係の判断に迷われる場合には、専門知識を持つ社会保険労務士に相談することが最も確実な方法と言えます。

仙台で障害年金の申請や相談をご検討されている方は、経験豊富な障害年金専門の社労士が初診日の特定や因果関係の整理まで丁寧にサポートいたしますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。

 

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