脳梗塞・脳出血と障害年金 – 申請からの完全ガイド

脳梗塞とは

脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳組織には血流が十分に行き届かなくなる病態を指します。脳梗塞の原因には、血管内での血液の塊(血栓)や動脈硬化による血管の狭窄があります。脳梗塞の症状には、片麻痺や言語障害・高次脳機能障害などがあり、症状の重さによっては即座の医療対応が必要となります。

脳出血とは、脳内の血管が破れて出血が起こる状態を指します。脳出血は急性に発症し、重篤な症状を引き起こすことがあります。その結果として、脳圧の上昇、意識障害、麻痺・言語障害・高次脳機能障害などの症状が現れることがあります。

ここでは、脳梗塞・脳出血で障害年金を受給するためのポイントや注意点等について解説します

 

障害年金とは?

障害年金とは、けがや病気などで体や心が「障害の状態」になってしまったときに受給できる公的年金です。

この「障害の状態」とは、目や耳、手足の不自由などの障害だけでなく、がんや糖尿病、心臓、肺などの内臓関係の病気、うつ病などの心の病気により、長い間にわたって療養が必要で仕事ができない、又は仕事をしてもフルタイムの勤務ができない、及び普段の生活においても人の助けが必要になるような状態を指します。

もちろん脳梗塞・脳出血の障害年金の対象傷病です。

 

脳梗塞・脳出血で障害年金は受給できる?

脳梗塞・脳出血で障害年金の受給は可能です。

脳梗塞・脳出血の後遺症により、「肢体機能」「そしゃく・嚥下機能」「言語機能」「高次脳機能障害」に障害が残ってしまった場合の障害認定基準は次のとおりになります。

 

麻痺など肢体機能に障害が残ってしまった場合

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が他の傷病の1級相当に該当し、他人の介助を受けなければほとんど自分の用事を済ませられない状態。

生活の範囲がベッド周辺に限られる場合は障害年金等級1級と認められる可能性があります。

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が他の傷病2級相当に該当し、必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても日常生活が困難なため労働により収入を得ることができない状態。

軽食作りや下着の洗濯等はできるが、 それ以上の活動はできなかったり、活動範囲が家の中に限られるような場合は、障害等級2級に該当する可能性があります。

3級

身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

働くことはできるが、フルタイムでの勤務ができなかったり、軽作業のみを任せてもらっているなど職場から特別の配慮を受けている場合は障害等級3級に該当する可能性があります。

 

そしゃく・嚥下能力に後遺症が残ってしまった場合

2級

・そしゃくの機能を欠くもの
・流動食以外は摂取できないもの
・経口的に食物を摂取することができないもの
・経口的に食物を摂取することが極めて困難なもの(食餌が口からこぼれ出るため常に手、器物等でそれを防がなければならないもの、または、一日の大半を食事に費やさなければならない程度のもの)

3級

・そしゃくの機能に相当程度の障害を残すもの
・経口摂取のみでは十分な栄養摂取ができないためにゾンデ栄養の併用が必要なもの
・全粥又は軟菜以外は摂取できない程度のもの

障害手当金

そしゃくの機能に障害を残すもの

 

言語障害が残ってしまった場合

2級

・音声又は言語機能に著しい障害を有するもの
・発声に関わる機能を喪失するか、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方がほとんどできないため、日常会話が誰とも成立しない状態

3級

・言語の機能に相当程度の障害を残すもの

障害手当金

・言語の機能に障害を残すもの

 

 

高次脳機能障害が残ってしまった場合

1級

高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの

2級

認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が 著しい制限を受けるもの

3級

・認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、 労働が制限を受けるもの
・認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの

脳梗塞の障害認定は、日常生活にどのくらい影響が出ているかがポイントになります。
※障害基礎年金に加入している方は1~2級の障害等級に該当する必要があります。

 

 

精神障害者福祉手帳について

「高次脳機能障害」が残ってしまった方は精神障害者福祉手帳の取得が可能です。

また障害年金の請求をサポートする中で「精神障害者福祉手帳をもっていないのですが…障害年金はもらえないのでしょうか?」というご相談をいただくことがあります。

障害年金制度と精神障害者福祉手帳の制度は全く別のものですので、手帳を持っていなかったとしても要件を満たしていれば請求が可能です。他にも、精神障害者福祉手帳3級だった方が障害年金2級を受給したといった事例もあります。

 

脳梗塞における受給要件

脳梗塞で障害年金を受給するための要件は以下の3つです。

初診日・認定日要件

初診日とは「障害年金を請求する傷病で症状が出て初めて病院等の医療機関で受診した日」を指します。

ここでは脳梗塞の症状が出始めてから最初に病院にかかった日となります。

障害の残る重度の脳梗塞は、たいていの場合、救急車で搬送されることが多いため、初診日は明確なことが多いです。

ですが、頭痛といった初期症状で病院にかかり、その際に脳梗塞と診断されなかったとしても後から因果関係が認められれば初期症状の際に病院にかかった日が「初診日」となります。また、心原性脳梗塞の場合は、初診日は心臓の傷病の初期症状で、最初に通院した日が初診日になると日本年金機構は捉えているようです。

そしてこの初診日から原則1年6か月が経過した日が「障害認定日」とされ、この認定日を迎えないと障害年金を請求できません。

特例として、肢体障害が固定した場合は初診日から半年たてば請求が可能となります。

 

保険料納付要件

障害年金を請求する際には一定期間保険料を納めていることが必要です。

初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間について、保険料納付済期間・保険料免除期間が合わせて3分の2以上あることが保険料納付要件の原則です。

しかし、特例として保険料納付要件は基準日の属する月の前々月から遡って1年間、年金の未納がなければ要件を満たしています。

保険料をきちんと納付しているかは年金事務所や市町村役場に問い合わせることで確認ができます。

 

障害状態該当要件

障害年金を貰うためには障害認定日以降において、一定の障害の状態にあることが必要です。

具体的な目安は「脳梗塞・脳出血で障害年金受給できる?」の項で解説しておりますので、是非ご覧ください。

 

障害等級判定の流れ

障害年金を受給するまでの大まかな流れは以下の通りです。

医師に診断書を依頼

医師に診断書を書いてもらうよう依頼をします。

診断書を依頼する際には日常生活能力の内容と自覚症状を医師に伝えることが大切です。

必要書類を提出

年金事務所に医師の診断書とともに必要書類を提出します。

 

脳梗塞・脳出血における障害年金請求(申請)の注意点

書類の内容に注意

障害年金の書類の中には発症から今までの病歴を記述するものがあります。この書類と診断書をもとに日本年金機構が障害年金の支給・不支給を決定するのです。

この時、書類・診断書ともに記載内容に注意が必要です。

それは「できないことを書くこと」「診断書の内容を確認すること」です。

障害年金の支給・不支給の決定は対面で障害をお持ちの方を見て審査するのではなくこの書類で間接的に行われます。この時「できること」を書いてしまうと障害の状態が軽いとみなされて不支給となってしまうことがあります。

また、「診断書」は病院での様子を見て医師が作成します。しかしながら、病院で受診している時は調子のよい時が多いのではないでしょうか。

そうすると調子のよい時ばかりが診断書に反映されてしまい、普段の生活の中で調子の悪い時の様子が反映されず、結果不支給になってしまうことがあります。

なので、常日頃から調子の悪い時の様子を医師に正直に伝えること,自分の障害の状態が正しく反映されているかを確認することが重要です。

審査請求、再審査請求

障害年金は最初の請求が認められなかった場合、審査請求や再審査請求といった形で改めて請求を出すことができます。しかしながら、最初の請求が覆るケースは極めてまれです

しっかりと必要書類等の準備をしてから初めての請求を行いましょう。

 

障害年金は脳梗塞・脳出血の障害の重さだけでなく、生活状況も重要

ここまで脳梗塞・脳出血と障害年金についての説明をさせていただきました。すべての障害について言えることですが、要件や書類など形式的な準備はもちろん重要です。しかし、何よりも大切なものは障害の状態や生活状況や働く上でどのくらいの会社側の配慮を受けているのかなどを正確に書類に反映することです。

審査官は対面で障害の状態を判断するのではなく、書類で判断します。特に高次脳機能障害にかかっている方であれば障害の状態だけでなくその生活状況なども加味して判断がなされることがあります。

最初の請求が非常に重要となりますので、不安であれば一度障害年金専門の社会保険労務士に相談することをお勧めします。

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