知的障害と障害年金 – 申請からの完全ガイド
目次
知的障害とは
知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳未満)にあらわれ、日常生活の中でさまざまな不自由が生じることをいいます。
例えば以下のような症状がみられます。
・複雑な事柄やこみいった文章・会話の理解が不得手
例)電話のやり取りができない・文字の読み書きが苦手 ・おつりのやりとりのような日常生活の中での計算が苦手 ・複雑な状況判断が苦手 例)1人で留守番ができない・来客応対ができない |
このように生活に支障が生じるため、持続的に援助が必要な障害であることが特徴です。
一口に知的障害といっても一般的には知能指数(IQ)によって分類されており、軽度(IQ51~おおむね70)、中等度(IQ50~36)、重度(IQ35~21)、最重度(IQ20以下)となっています。但し、IQのみで障害年金の支給・不支給が決定されるわけではありません。
ここでは、知的障害で障害年金が受給するためのポイントや注意点等について解説します。
障害年金とは?
障害年金とは、けがや病気などで体や心に「障害の状態」になってしまったときに受給できる公的年金です。
この「障害の状態」とは、目や耳、手足の不自由などの障害だけでなく、がんや糖尿病、心臓、肺などの内臓関係の病気、うつ病などの心の病気により、長い間にわたって療養が必要で仕事ができない、又は仕事をしてもフルタイムの勤務ができない、及び普段の生活においても人の助けが必要になるような状態を指します。
もちろん知的障害も対象傷病の一つです。
軽度の知的障害では障害年金は受給できない?
知的障害はIQによって軽度・中等度・重度・最重度と区分されていますが、療育手帳についてはその限りではありません。
例えば仙台では「A」(重度)と「B」(中度・軽度)というように区分されます。
では障害程度が「B」の療育手帳を持つ方は障害年金を受給できないのでしょうか。
実はそんなことはないのです。
というのも障害年金制度と療育手帳制度は全く別の制度となっているため、軽度の知的障害を持つ方であっても要件を満たしていれば受給できる可能性は十分にあります。
知的障害における受給要件
知的障害で障害年金を受給するための要件は以下になります。
障害状態要件
障害年金を貰うためには障害認定日以降において、一定の障害の状態にあることが必要です。
具体的な流れとしては、まず年金事務所(国民年金の場合は市区町村の国民年金課)が内容を確認し、年金を受給するために必要な資格があるかどうかを判断します。その後、障害の状態を認定医が判断します。
なお、審査は診断書などの資料を見て客観的に判断します。
つまり、審査は診断書や申立書などの書類の内容ですべて判断するので、
日常生活の状態をきちんと伝えることができる書類を準備することが非常に大事になります。
障害等級判定の流れ
障害年金を受給するまでの大まかな流れは以下の通りです。
医師に診断書を依頼
医師に診断書を書いてもらうよう依頼をします。
必要書類を提出
年金事務所に医師の診断書とともに必要書類を提出します。
知的障害における障害年金請求(申請)の注意点
初診日要件・保険料納付要件は不要
知的障害は先天的な障害のため、「20歳前障害」とされ初診日は生年月日となり、納付要件は必要なくなります。納付要件を満たしていなくとも障害状態要件を満たしていれば障害年金が受給できます。
書類の内容に注意
障害年金の書類の中には発症から今までの病歴を記述するものがあります。この書類と診断書をもとに障害年金の支給・不支給を決定するのです。
ですが、先天性の知的障害では生まれたときから現在までの症状を記述する必要があるためその内容は膨大です。そのなかでどの行動やエピソードが知的障害から起因するものであるかを詳細に記入していかなくてはいけません。
審査請求、再審査請求
障害年金は最初の請求が認められなかった場合、審査請求や再審査請求といった形で改めて請求を出すことができます。しかしながら、最初の請求が覆るケースは極めてまれです。
しっかりと必要書類等の準備をしてから初めての請求を行いましょう。
障害年金は知的障害の重さだけでなく、生活状況も重要
ここまで知的障害についての説明をさせていただきました。すべての障害について言えることですが、IQといった数値的な要件や書類など形式的な準備はもちろん重要です。しかし、何よりも大切なものは障害の状態や生活状況や働く上でどのくらいの会社側の配慮を受けているのかなどを正確に書類に反映することです。
審査官は対面で障害の状態を判断するのではなく、書類で判断します。特に軽度知的障害をお持ちの方であれば障害の状態だけでなくその生活状況なども加味して判断がなされることがあります。
最初の請求が非常に重要となりますので、不安であれば一度障害年金専門の社会保険労務士に相談することをお勧めします。