17.血液・造血器疾患による障害認定基準

【認定基準】
血液・造血器疾患による障害の程度は、自覚症状、 他覚所見、 検査成績、 一般状態、 治療及び症状の経過(薬物療法の効果や合併症など)、 日常生活の具体的な状況の要素を総合的に考慮して認定されます。認定は、少なくとも1年以上の療養を必要とする病状に基づいて以下の等級に分類されます。

1級: 長期にわたる安静が必要で、日常生活がほぼ不可能な状態
2級: 日常生活に著しい制限がある状態
3級: 労働に制限がある状態

 【認定要領の要点】
血液・造血器疾患は以下の3つに大別されます

  1. 赤血球系・造血不全疾患(例: 再生不良性貧血、溶血性貧血)
  2. 血栓・止血疾患(例: 血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症)
  3. 白血球系・造血器腫瘍疾患(例: 白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)

 (主要症状)

  • 自覚症状:顔面蒼白、易疲労感、動悸、息切れ、頭痛、めまい、知覚異常、紫斑、月経過多、骨痛、関節痛など
  • 他覚所見:黄疸、心雑音、舌の異常、易感染症、出血傾向、血栓傾向、リンパ節膨張、肝腫、脾腫など

( 検査)

  • 血球算定検査・血液生化学検査・免疫学的検査・ 鉄代謝検査・ 骨髄穿刺 ・リンパ節生検 ・骨髄生検・ 凝固系検査・ 染色体検査・ 遺伝子検査・細胞表面抗原検査 ・画像検査(CT検査・超音波検査など)

(一般状態区分表)

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの  例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

A表I欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表I欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

A表II欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表II欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

3級

A表Ⅲ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅲ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

 

 

1.赤血球系・造血器疾患(再生不良性貧血、溶血性貧血等)

A表

区分

臨床所見

1 高度の貧血、出血傾向、易感染症を示すもの
2 輸血をひんぱんに必要とするもの

II

1 中度の貧血、出血傾向、易感染症を示すもの
2 輸血を時々必要とするもの

1 軽度の貧血、出血傾向、易感染症を示すもの
2 輸血を必要に応じて行うもの

B表

区分

検査所見

1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの
(1)ヘモグロビン濃度が7.0g/dL未満のもの
(2)網赤血球数が2万/μL未満のもの

2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの
(1)白血球数が1,000/μL未満のもの
(2)好中球数が500/μL未満のもの

3 末梢血液中の血小板数が2万/μL未満のもの

1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの
(1)ヘモグロビン濃度が7.0g/dL以上9.0g/dL未満のもの
(2)網赤血球数が2万/μL以上6万/μL未満のもの

2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの
(1)白血球数が1,000/μL以上2,000/μL未満のもの
(2)好中球数が500/μL以上1,000/μL未満のもの

3 末梢血液中の血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの

1 末梢血液中の赤血球像で,次のいずれかに該当するもの
(1)ヘモグロビン濃度が9.0g/dL以上10.0g/dL未満のもの
(2)網赤血球数が6万/μdL以上10万/μdL未満のもの

2 末梢血液中の白血球像で,次のいずれかに該当するもの
(1)白血球数が2,000/μL以上3,300/μL未満のもの
(2)好中球数が1,000/μL以上2,000/μL未満のもの

3 末梢血液中の血小板数が5万/μL以上10万/μL未満のもの

 

 

2.血栓・止血疾患(血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症等)

A表

区分

臨床所見

1 高度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの
2 補充療法をひんぱんに行なっているもの

II

1 中度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの
2 補充療法を時々に行なっているもの

1 軽度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの
2 補充療法を必要に応じ行なっているもの

(注)補充療法は、凝固因子製剤(代替医薬品やインヒビタ治療薬の投与を含む。)の輸注、血小板の輸血、新鮮凍結血漿の投与などを対象にする。

B表

区分

検査所見

1 APTT又はPTが基準値の3倍以上のもの
2 血小板数が2万/μL未満のもの
3 凝固因子活性が1%未満のもの

1 APTT又はPTが基準値の2倍以上3倍未満のもの
2 血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの
3 凝固因子活性が1%以上5%未満のもの

1 APTT又はPTが基準値の1.5倍以上2倍未満のもの
2 血小板数が5万/μL以上10万/μL未満のもの
3 凝固因子活性が5%以上40%未満のもの

 

 

3.血栓・止血疾患(血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症等)

A表

区分

臨床所見

1 高度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの
2 補充療法をひんぱんに行なっているもの

II

1 中度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの
2 補充療法を時々に行なっているもの

1 軽度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの
2 補充療法を必要に応じ行なっているもの

(注)補充療法は、凝固因子製剤(代替医薬品やインヒビタ治療薬の投与を含む。)の輸注、血小板の輸血、新鮮凍結血漿の投与などを対象にする。

B表

区分

検査所見

1 APTT又はPTが基準値の3倍以上のもの
2 血小板数が2万/μL未満のもの
3 凝固因子活性が1%未満のもの

1 APTT又はPTが基準値の2倍以上3倍未満のもの
2 血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの
3 凝固因子活性が1%以上5%未満のもの

1 APTT又はPTが基準値の1.5倍以上2倍未満のもの
2 血小板数が5万/μL以上10万/μL未満のもの
3 凝固因子活性が5%以上40%未満のもの

 

 

 

4.白血球系・造血器腫瘍疾患(白血病、悪性リンパ種、多発性骨髄腫等)

A表

区分

臨床所見

1 発熱、骨・関節痛、るい痩、貧血、出血傾向、リンパ節腫脹、易感染症、肝脾腫等の著しいもの
2 輸血をひんぱんに必要とするもの
3 治療に反応せず進行するもの

II

1 発熱、骨・関節痛、るい痩、貧血、出血傾向、リンパ節腫脹、易感染症、肝脾腫等のあるもの
2 輸血を時々必要とするもの
3 継続的な治療が必要なもの

継続的ではないが治療が必要なもの

(注1)A表に掲げる治療とは、疾病に対する治療であり、輸血などの主要な症状を軽減するための治療(対症療法)は含まない。

(注2)A表に掲げる治療に伴う副作用による障害がある場合は、その程度に応じて、A表の区分をⅡ以上とする(Common Terminology Criteria For Adverse Events(CTCAE)のグレド2以上の程度を参考する。)

 

B表

区分

検査所見

1 末梢血液中のヘモグロビン濃度が7.0/dL未満のもの
2 末梢血液中の血小板数が2万/μL未満のもの
3 末梢血液中の正常好中球数が500/μL未満のもの
4 末梢血液中の正常リンパ球数が300/μL未満のもの

1 末梢血液中のヘモグロビン濃度が7.0/dL以上9.0/dL未満のもの
2 末梢血液中の血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの
3 末梢血液中の正常好中球数が500/μL以上1,000/μL未満のもの
4 末梢血液中の正常リンパ球数が300/μL以上600/μL未満のもの

1 末梢血液中のヘモグロビン濃度が9.0/dL以上10.0/dL未満のもの
2 末梢血液中の血小板数が5万/μL以上10万/μL未満のもの
3 末梢血液中の正常好中球数が1,000/μL以上2,000/μL未満のもの
4 末梢血液中の正常リンパ球数が600/μL以上1,000/μL未満のもの

 

(1)検査成績の扱い
血液・造血器疾患の障害認定では、最も適切な検査成績に基づいて判定します。輸血や補充療法で一時的に改善する場合は、治療前の検査成績を基にします。

 

(2)総合的な認定
各疾患や個人差により臨床所見や検査所見が異なるため、他の検査成績や日常生活状況も考慮して総合的に認定します。

 

(3)造血幹細胞移植の取扱い
術後の病状や治療経過、検査成績などを考慮して総合的に認定します。慢性GVHDについては、ガイドラインに基づき、日常生活状況を把握して総合的に認定します。 障害年金を受給している者が移植を受けた場合、術後1年間は従前の等級を維持します。

 

この要約が役立つことを願っています。他に質問があれば教えてください。

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