13.呼吸器疾患の障害認定基準
【認定基準】
総合的な認定: 自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療経過、年齢、合併症の有無、日常生活状況などを総合的に評価する。等級の分類:1級: 長期にわたり安静が必要で、日常生活が不能な程度。2級: 日常生活に著しい制限がある程度。3級: 労働に制限がある程度。肺結核、じん肺、気管支喘息が特別な取扱いを要する。この基準に基づいて、呼吸器疾患の障害の程度が認定されます。
【認定要領の要点】
呼吸器疾患は以下の3つの認定基準に区分されます。
- 肺結核
- じん肺
- 呼吸不全
1.肺結核
(1)障害の程度の認定方法:病状判定と機能判定に基づいて認定。
(2)病状による障害の程度:自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、排菌状態(喀痰等の塗抹、培養検査等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等を総合的に評価。
(3)等級の例示:病状判定により各等級に相当すると認められるものを一部例示。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 認定の時期前6月以内に常時排菌があり、胸部X線所見が日本結核病学会病型分類(以下「学会分類」という。)のI型(広汎空洞型)又はⅡ型(非広汎空洞型)、Ⅲ型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの |
2級 | 1.認定の時期前6月以内に排菌がなく、学会分類のI型若しくはH型又はⅢ型で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの
2.認定の時期前6月以内に排菌があり、学会分類のⅢ型で病巣の拡がりが1(小)又は2(中)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの |
3級 | 1.認定の時期前6月以内に排菌がなく、学会分類のI型若しくはⅡ型又はⅢ型で、積極的な抗結核薬による化学療法を施行しているもので、かつ、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの
2.認定の時期前6月以内に排菌があり、学会分類IV型であるもので、かつ、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの |
(4)合併症の考慮:肺結核に他の結核や疾病が合併している場合、合併症の軽重や治療法、日常生活状況を総合的に考慮して認定する。
(5)呼吸不全の認定:肺結核及び肺結核後遺症の障害の程度は、「呼吸不全」の認定要領に基づいて判断する。
(6)胸郭変形の扱い:加療による胸郭変形は認定対象外だが、肩関節の運動障害を伴う場合は上肢の障害として認定する。
(7)抗結核剤の化学療法:少なくとも2剤以上の抗結核剤による積極的な化学療法を施行しているものを指す。
2.じん肺
(1)障害の程度の認定:病状判定と機能判定に基づいて認定。
(2)病状による障害の程度: 胸部X線所見、呼吸不全の程度、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等を総合的に評価。
(3)等級の例示:病状判定により各等級に相当すると認められるものを一部例示。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの |
2級 | 胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの |
3級 | 胸部X線所見がじん肺法の分類の第3型のもので、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とするもの |
(4)じん肺の機能判定による障害の程度は、「C呼吸不全」の認定要領によって認定する。
3.呼吸不全
(1)動脈血ガス分析値(特に動脈血O₂分圧と動脈血CO₂分圧)が異常で、生体が正常な機能を営めなくなった状態を指します。主に慢性呼吸不全が認定対象。
(2)原因疾患
・閉塞性換気障害(例: 肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎)・拘束性換気障害(例: 間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺)・心血管系異常、神経・筋疾患、・中枢神経系異常など多岐にわたり、肺疾患のみが対象疾患ではない。
(3)自覚症状
咳、痰、喘鳴、胸痛、労作時の息切れ
(4)他覚所見
チアノーゼ、呼吸促迫、低酸素血症
(5)検査成績
・動脈血ガス分析値・予測肺活量1秒率・必要に応じて行う運動負荷肺機能検査
(6)評価基準
動脈血ガス分析値と予測肺活量1秒率の異常の程度を参考にします。測定は安静時に行う。
(7)表
動脈血ガス分析値A
区分 | 検査項目 | 単位 | 軽度異常 | 中等度異常 | 高度異常 |
1 | 動脈O2分圧 | Torr | 70~61 | 60~56 | 55以下 |
2 | 動脈CO2分圧 | Torr | 46~50 | 70~59 | 60以下 |
(注)病状判定に際しては、動脈血02分圧値を重視する。
(8)表
予測肺活量1秒率
検査項目 | 単位 | 軽度異常 | 中等度異常 | 高度異常 |
予測肺活量1秒率 | % | 40~31 | 30~21 | 20以下 |
(9)呼吸不全による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。
一般状態区分表
区分 | 一般状態 |
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
工 | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
(10)呼吸不全による各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 前記(4)のA表及びB表の検査成績が高度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のオ該当するもの |
2級 | 前記(4)のA表及びB表の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの |
3級 | 前記(4)のA表及びB表の検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの |
なお、呼吸不全の障害の程度の判定は、A表の動脈血ガス分析値を優先するが、その他の検査成績等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。
(11)慢性気管支喘息については、症状が安定している時期においての症状の程度、使用する薬剤、酸素療法の有無、検査所見、具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定することとし、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 最大限の薬物療法を行っても発作強度が大発作となり、無症状の期間がなく一般状態区分表のオに該当する場合であって、予測肺活量1秒率が高度異常(測定不能を含む)、かつ、動脈血ガス分析値が高度異常で常に在宅酸素療法を必要とするもの |
2級 | 呼吸困難を常に認める。常時とは限らないが、酸素療法を必要とし、一般状態区分表のエ又はウに該当する場合であって、プレドニソロンに換算して1日10mg相当以上の連用、又は5mg相当以上の連用と吸入ステロイド高用量の連用を必要とするもの |
3級 | 喘鳴や呼吸困難を週1回以上認める。非継続的なステロイド薬の使用を必要とする場合があり、一般状態区分表のウ又はイに該当する場合であって、吸入ステロイド中用量以上及び長期管理薬を追加薬として2剤以上の連用を必要とし、かつ、短時間作用性吸入β2刺激薬頓用を少なくとも週に1回以上必要とするもの |
(12)在宅酸素療法
24時間の在宅酸素療法を受けており、軽易な労働以外に常に支障がある場合は3級と認定。ただし、症状や日常生活の状況によっては上位等級も可能。認定時期は在宅酸素療法開始日とする(初診日から1年6ヶ月を超える場合を除く)。
(13)肺血管疾患
原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症などは、具体的な日常生活状況などを総合的に考慮して認定。
(14)非代償性の肺性心
慢性肺疾患により非代償性の肺性心を生じている場合は3級と認定。治療経過や日常生活の状況によっては上位等級も可能。
(15)呼吸機能検査
慢性肺疾患では個人の順応や多臓器不全の影響もあり、呼吸機能検査成績が必ずしも障害の程度を示すものではない。
(16)肺手術と呼吸不全
肺疾患により手術を行い、その後呼吸不全を生じた場合、手術と呼吸不全発生までの期間が長くても因果関係が認められる。
この要約が役立つことを願っています。他に質問があれば教えてください。