【受給事例】 1型糖尿病で障害厚生年金3級に認定され、年額約90万円を受給できたケース
相談者
- 性別: 男性
- 年齢層: 50代
- 職業: 会社員
- 傷病名: 1型糖尿病
- 決定した年金の種類と等級: 障害厚生年金3級
- 年間受給額: 約90万円
ご相談いただいたときの状況
相談者は、足に痛みがあり、神経障害のような症状を感じるようになったことからA内科を受診しました。検査の結果、「糖尿病」と診断され、その後は月2回程度の通院を続けながら、投薬治療や検査を受けていました。治療を続ける中でインスリン治療が必要となりました。当時は仕事を続けることができていましたが、勤務を終えた後には強い疲労感を感じるようになっていました。
その後、セカンドオピニオンを受けるためB総合病院へ転院し、「インスリン依存性糖尿病」と診断されました。「インスリン依存性糖尿病(IDDM)」は以前使われていた分類・呼称で、現在は「1型糖尿病」という病型名が一般的に用いられています。ただし、インスリン治療を必要とする糖尿病がすべて1型糖尿病というわけではありません。今回の相談者については、その後も1型糖尿病として継続的な治療を受けていました。B総合病院でも月2回程度の通院を続け、投薬や検査に加えてインスリン治療を継続しました。
仕事については従来の職種を続けていましたが、病状の影響から勤務後の疲労感は次第に強くなっていきました。
さらに、インスリン治療に伴う低血糖も大きな問題となりました。その後に重度の低血糖を起こして昏睡状態となり、B総合病院へ救急搬送され、入院治療を受けています。その後、紹介によりC総合病院へ転院し、以後は月1回程度の通院を続けながら、投薬治療、インスリン治療、各種検査を継続して受けることになりました。
特に、これまでの診療記録や検査結果、治療内容を確認したところ、後述する糖尿病の障害認定基準において、障害厚生年金3級に該当する症状や検査結果が確認できることも判明しました。
糖尿病による合併症も生じていました。C総合病院の眼科では「糖尿病網膜症」と診断され、左眼の硝子体手術を受けました。その後も定期的に眼科へ通院し、レーザー治療や白内障の手術も受けています。また、足のつま先は感覚が乏しく、末梢神経障害による痛みもありました。
特にご本人が不安を感じていたのが、「いつ低血糖になるか分からない」ということでした。就寝中に低血糖発作を起こし、救急搬送されたことが4~5回あり、低血糖に対する不安を常に抱えていました。その不安から精神的に不安定になったり、パニック状態になったりすることもあり、睡眠にも影響が出ていました。
日常生活にも大きな影響がありました。仕事を終えて帰宅すると、強い倦怠感から何もできない状態になることが多く、炊事、掃除、洗濯などの家事全般についても家族から援助が必要とな状態となっていました。ご本人からも、もし「一人暮らしをするとしたら、ヘルパーなどの援助がなければ生活を維持することは難しいと思う」とのお話がありました。
仕事についても、病気になる前と同じ働き方ではありませんでした。以前は体力を必要とする業務に従事していましたが、現在は病状を考慮して職場から配慮を受け、事務作業など身体への負担が少ない仕事を中心に担当しています。さらに、身体的に負担の大きい部署には配置しないよう職場から配慮を受けながら、何とか就労を継続している状態でした。
当事務所で行ったサポート
今回の障害年金請求では、まず初診日を確実に証明することから手続きを進めました。初診から長期間が経過していましたが、当時受診した医療機関から「受診状況等証明書」を取得することができ、初診日を確認したうえで障害厚生年金の請求準備を進めました。
次に、これまでの治療経過を整理し、インスリン治療の状況、低血糖発作、救急搬送や入院歴、検査結果、糖尿病による合併症などを一つずつ確認しました。
さらに、症状や検査結果を確認したところ、後述する糖尿病の障害認定基準において、障害厚生年金3級に該当する可能性がある状態であることが分かりました。そこで、診断書を主治医に作成していただく際には、糖尿病に関する障害年金の認定基準のコピーもお渡ししました。日々の診療を行っている医師であっても、障害年金制度の認定基準について必ずしも詳細まで把握されているとは限りません。そのため、認定基準を確認していただいたうえで、これまでの治療内容や検査結果、低血糖発作などの状態を診断書に適切に反映していただけるよう準備しました。
また、相談者は障害年金を請求した時点でも会社員として勤務していました。しかし、「現在も働いている」という事実だけでは、病気になる前と同じように問題なく勤務できているように受け取られる可能性があります。実際には、以前従事していた体力を必要とする業務を続けることが難しくなり、現在は職場の配慮によって事務作業などの身体的負担が少ない業務を中心に担当していました。さらに、身体的負担の大きな部署へ配置されないよう、職場から継続的な配慮を受けていることも主治医にお伝えしました。
日常生活についても、仕事を終えて帰宅すると強い倦怠感のため何もできない状態になるなど、仕事を続けることで日常生活にも大きな負担が生じていました。
これらの内容について、病気になる前と現在の仕事内容を比較しながら、病状によって働き方がどのように変化したのか、どのような職場の配慮を受けることで就労を継続できているのか、さらに日常生活にどの程度の支障が生じているのかを具体的に整理し、「病歴・就労状況等申立書」に詳しく記載しました。
このように、初診日を「受診状況等証明書」で確実に証明したうえで、主治医には障害認定基準を確認していただき、病歴・就労状況等申立書には診断書だけでは伝わりにくい低血糖発作の実態や就労上の配慮、日常生活上の支障を具体的に記載しました。
結果
請求の結果、1型糖尿病により障害厚生年金3級として認定され、年額約90万円を受給することができました。
今回のケースは、糖尿病の治療内容だけではなく、低血糖による救急搬送や入院歴、合併症、日常生活への影響、さらに職場で受けている具体的な配慮まで整理したことが重要な事例となりました。
社労士から見たこの事例のポイント
今回の事例では、糖尿病の「病型」と「インスリン治療」の関係を理解しておくこともポイントの一つです。
糖尿病にはいくつかの種類がありますが、代表的なものが「1型糖尿病」と「2型糖尿病」です。1型糖尿病は、主に自己免疫などによって膵臓にあるインスリンを作る細胞が破壊され、インスリンが不足することで発症する糖尿病です。生命を維持するために継続的なインスリン治療が必要となることが一般的です。一方、2型糖尿病は、インスリンの分泌不足やインスリンが効きにくくなることなどによって発症します。食事・運動療法や内服薬だけでなく、病状によってはインスリン治療が必要になることもあります。
そして、障害年金では「1型糖尿病だから障害年金が受給できる」「インスリンを使用しているから3級になる」というわけではありません。糖尿病で障害厚生年金3級が認定されるためには、単にインスリン治療を行っているだけではなく、必要なインスリン治療を継続しても血糖コントロールが困難な状態であることが重要です。
認定基準では、検査日前に90日以上継続して必要なインスリン治療を行っていることを前提として、
- 血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満で内因性インスリン分泌が枯渇している場合、
- 自己回復できないほどの重症低血糖が平均して月1回以上ある場合、
- 糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上ある場合、
上記のいずれかに該当し、さらに一般状態についても所定の基準を満たすことが3級認定の目安となります。
そのため、糖尿病の障害年金請求では、インスリン治療の期間だけでなく、Cペプチド値、重症低血糖の頻度、入院歴、そして日常生活や仕事への影響を確認することが重要です。
また、糖尿病では長い治療経過の中で、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などの合併症が現れることがあります。
当事務所でサポートした別のケースでは、当初は糖尿病で障害厚生年金3級を受給していましたが、その後、糖尿病網膜症による眼の障害が悪化し、障害状態の変化を踏まえて額改定請求を行った事例もありました。特に糖尿病網膜症などによる視野障害は、徐々に進行するとご本人が変化に気付きにくい場合があります。両眼から得られる情報を脳が補いながら見ていることなどもあり、「自分ではそれほど見え方が悪くなっていない」と感じていても、眼科の検査によって視野障害の進行が確認されることがあります。
そのため、糖尿病で障害年金を受給している方も、現在の等級がずっと変わらないとは限りません。糖尿病網膜症などの合併症が進行し、障害の程度が重くなった場合には、額改定請求を検討できる可能性があります。
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