【受給事例】右後頭葉脳出血後の高次脳機能障害で障害厚生年金1級、年額約185万円が認定されたケース

相談者

  • 性別: 男性
  • 年齢層: 50代
  • 傷病名: 右後頭葉脳出血を起因とする高次脳機能障害
  • 決定した年金の種類と等級: 障害厚生年金1級
  • 年間受給額: 約185万円

 

ご相談いただいたときの状況

相談者は5年前、呂律が回らない、言葉が出にくい、身体に力が入らないなどの異変を自覚し、A病院を受診しました。MRI検査などの結果、「多発性脳梗塞」と診断され、入院のうえ治療を受けました。退院後も定期的な通院を続け、検査や投薬治療を受けていました。

その1年後後には吐き気などの症状が現れ、検査の結果「左脳出血」と診断されました。B病院へ救急搬送され、脳出血に対する治療とリハビリテーションを受けた後、A病院へ転院して治療を継続しました。

数年後にさらに頭痛や視力低下が出現しました。頭部CT検査の結果、「右後頭葉脳出血」と診断され、A病院を経て、再びB病院へ紹介されて入院治療を受けました。

この3回目の「右後頭葉脳出血」後に、短期記憶障害、言語障害、理解力低下、注意障害などの高次脳機能障害が顕著になりました。

特に短期記憶の障害が著しく、直前に話した内容でも忘れてしまう状態でした。受診日や予定についても繰り返し家族に確認し、日にちや時間を自分で把握することが難しくなっていました。

また、食事をしたこと自体を忘れて再び食事をすることがあるほか、服薬についても飲み忘れや誤った時間帯の薬を服用してしまうことがあり、家族による管理が必要でした。

注意障害や遂行機能障害もみられ、一つのことを継続することや、複数の作業を順序立てて行うことが困難になりました。自分で予定を立てて準備・行動することも難しく、日常生活のさまざまな場面で家族からの指示や声掛けを必要としていました。

さらに、以前から知っている場所でも道順が分からなくなったり、病院内で迷ったりすることがあり、単独での外出にも支障が生じていました。

感情面でも変化がみられ、以前より怒りっぽくなり、思い通りにならないと感情的になることが増えていました。相手の立場を考えた対応が難しい場面や、周囲からの助言を受け入れにくい場面もみられました。

食事、身辺の清潔保持、金銭管理、買い物、通院・服薬、対人関係、安全保持など、日常生活および社会生活の広い範囲で配偶者の継続的な支援が必要な状態となっていました。

高次脳機能障害によって一般企業での通常就労も極めて困難となり、最終的には退職に至りました。

 

当事務所で行ったサポート

今回の障害年金請求で特に難しかったのは、高次脳機能障害の原因となった傷病と初診日をどのように整理するかという点でした。

相談者には、最初の「多発性脳梗塞」、その後の「左脳出血」、さらに「右後頭葉脳出血」と、数年間に複数の脳血管障害の発症歴がありました。

障害年金では初診日が重要になりますが、複数の傷病がある場合、現在の障害状態とそれぞれの傷病との医学的な因果関係を慎重に確認する必要があります。

そこで当事務所では、最初から一つの傷病に決めつけて請求を進めるのではなく、それぞれの傷病について「受診状況等証明書」を取得し、医療機関の記録や主治医の見解を確認しました。確認を進めたところ、それぞれの傷病について医学的な因果関係があるとは判断されませんでした。そのため、当事務所では「多発性脳梗塞」、「左脳出血」、「右後頭葉脳出血」について経過を整理し、それぞれの傷病ごとに病歴・就労状況等申立書を作成しました。

そして、「高次脳機能障害」の原因となった傷病および初診日については、収集した「受診状況等証明書」と「病歴・就労状況等申立書」を提出したうえで、日本年金機構の審査に判断を委ねる方針としました。

もう一つ重要だったのが、診断書を取得するタイミングです。

ご依頼をいただいた時点では、「右後頭葉脳出血」の初診日から1年6か月を経過していませんでした。当事務所では、仮に多発性脳梗塞や左脳出血を前提として早期に診断書を取得・提出しても、審査の結果、右後頭葉脳出血が高次脳機能障害の原因と判断された場合には、請求時期の問題から返戻や診断書の再取得・訂正などが必要になる可能性を考慮しました。

そこで、「右後頭葉脳出血」の初診日から1年6か月が経過する時期を見据えて請求準備を進め、その後、主治医に「診断書(精神の障害用)」の作成を依頼しました。結果的に、この請求時期を慎重に判断したことが、手続きを円滑に進めるうえで重要なポイントとなりました。

また、診断書だけでは伝わりにくい高次脳機能障害による日常生活への影響についても、病歴・就労状況等申立書で具体的に整理しました。単に「物忘れがある」「注意力が低下した」と記載するだけではなく、食事をしたことを忘れて再び食べてしまうこと、服薬を自分で管理できないこと、病院内でも道に迷うこと、金銭管理ができないこと、予定を立てて行動できないことなど、実際の日常生活においてどの程度家族の支援を必要としているのかが伝わるようにまとめました。

 

結果

日本年金機構による審査の結果、高次脳機能障害については「右後頭葉脳出血」を原因とする障害として判断され、障害厚生年金1級が認定されました。年間の受給額は約185万円となりました。

今回のケースでは、複数の脳血管障害が時間をおいて発症していたため、「どの傷病を高次脳機能障害の原因として請求するのか」「どの日を初診日として扱うのか」「いつ診断書を取得して請求するのか」という点が非常に重要でした。

最初から一つの傷病に決めつけず、各傷病について医療資料を収集して経過を整理したうえで請求時期を慎重に判断したことが、適切な認定につながった事例となりました。

 

社労士から見たこの事例のポイント

近年の障害年金相談では、一つの傷病だけではなく、複数の傷病を抱えている方からご相談をいただくことがあります。

このようなケースでは、現在の障害状態だけを見るのではなく、それぞれの傷病がいつ発症し、どの医療機関を受診し、その後どのような経過をたどったのかを整理することが重要です。

特に今回のように「多発性脳梗塞」「左脳出血」「右後頭葉脳出血」と複数の脳血管障害がある場合、高次脳機能障害がどの傷病に起因するのかという医学的因果関係の整理が大きなポイントになります。

原因となる傷病や初診日の判断によっては、障害認定日の時期も変わり得ます。そのため、請求のタイミングを誤ると、診断書を取得した後に訂正や再作成が必要になるなど、手続きが複雑化する可能性があります。

今回のケースでは、各傷病の受診状況等証明書などを取得して医療上の経過を確認し、それぞれの病歴を整理しました。そのうえで、右後頭葉脳出血を初診日とした場合の障害認定日も想定し、診断書の取得時期を慎重に判断しました。

結果として、高次脳機能障害は右後頭葉脳出血を原因とするものとして審査され、障害厚生年金1級の認定につながりました。

高次脳機能障害は、身体の麻痺などとは異なり、外見から障害の程度が分かりにくいことがあります。しかし、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などによって、実際には日常生活や就労に大きな支障が生じているケースがあります。

そのため、高次脳機能障害で障害年金を請求する際には、診断名だけではなく、「一人で生活するとしたら何ができないのか」「家族からどのような支援を受けているのか」「就労が困難になった具体的な理由は何か」といった実態を、診断書や病歴・就労状況等申立書を通じて適切に伝えることが重要です。

特に、脳梗塞や脳出血を複数回発症している場合は、初診日や医学的因果関係の判断が複雑になることがあります。複数傷病があるからこそ、医療機関の記録を一つずつ確認し、発症から現在までの経過を丁寧に整理したうえで請求方針を検討することが大切です。

 

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